①電子帳簿保存法とは
最近になってCMやテレビで、初めて「電子帳簿保存法」という単語を聞いたという人も多いのではないでしょうか。しかし、実はこの法律は今から約25年前の1988年から施行されています。
個人事業主や会社は毎年、所得税や法人税などの税金を納めます。これらの国税を正しく申告・納税するために商売の取引内容を示す「帳簿」や「書類」を日々正しく記録する保存する義務があります。
約40年前までは、数字はそろばんや電卓で計算をしたり、手書きの領収書を書いたり「紙」での保存が一般的でした。しかし、現代では計算ソフトを使用し自動で計算、パソコンでの保存が当たり前になっております。時代の変化に合わせて、電子での保存を認める「電子帳簿保存法」が開始されました。電子帳簿保存法は時代に合わせた方法で、会社や社員が負担なく国税関係の帳簿や書類を保存できるように作られた法律です。
ひとまとめに「電子帳簿保存法」と言っていますが、大きく3つの区分(保存方法)で構成されています。
1つ目は「電子帳簿等保存」。自らがパソコンなどで作成した国税関係帳簿や国税関係書類を、電子データのまま保存するときの取扱いについて定めたルール。国税関係帳簿は仕訳帳や売上台帳などにあたり、国税関係の決算書類は貸借対照表や損益計算書のことです。自社で発行した取引関係書類は契約書、請書等を指します。対応は任意です。
2つ目は「スキャナ保存」。紙で発行・受領した書類をスキャンして画像データで保存するときのルール。対応は任意です。
3つ目は「電子取引データ保存」。メールやクラウドへのアップロードで発行・受け取りした領収書や請求書などは必ず電子データのまま保存するときのルール。印刷した紙だけで保存しておくことはNGになります。2024年1月1日からは、3つ目の電子取引データ保存は、法人・個を問わずすべての事業者で義務付けられています。
②2024年1月からの改正点
先ほど紹介した「電子取引データの保存」が義務化されたことが大きな改正点になります。
義務化されたことにより、世間でこの法律が話題になりました。電子取引をしていても、印刷して紙だけでの保存が認められていた特例の期間が2023年12月で終了し、今後は必ず電子データで保存することに義務化されました。
今後は電子取引データを紙に印刷し保存していても、もとの電子データを保存していなければ法律違反になります。
電子取引とは、取引に必要な情報を紙ではなく電子データで授受する取引を指します。
具体的には、見積書や領収書をメールに添付したり、SNSのチャットにて、送ったり受け取ったりする方法が「電子取引」にあたります。他にもインターネットショッピングで商品を購入した際にウェブサイトからダウンロードした領収書等が該当します。
ネット上やパソコンで確認したら、電子データとして保存しておきます。保存するときに要件として、保存されたデータが改ざんされないようにすることと、保存されたデータを検索・表示できるようにすることが定められています。
要約しますと、お金や商品のやり取りをした「日付」「金額」「取引先」「取引内容」が書いてある書類を電子受け取った場合は、紙ではなく電子のまま「電子データの保存」に基づいて保存。紙に印刷してもとのデータを破棄は禁止になります。
③中小企業が対応しなければならないこと
電子取引データ保存は保存する要件に改ざんされないようにする「真実性の確保」と保存されたデータを検索・表示できるようにする「可視性の確保」という条件がありました。
「真実性の確保に対応するためにの最も簡単な方法として、電子取引データの削除及び訂正の防止をするためのルール「事務処理規程」を自社で作る方法があります。これは、国税庁のサイトから参考資料をダウンロードすることができます。
次に「可視性の確保」があります。これは、電子取引データを見れるようにディスプレイやプリンタを設置すること。会計ソフト等の操作説明書(オンラインヘルプもOK)を備え付けること。日付や取引先などで、検索機能を確保すること。これらが求められています。
2024年1月から「電子取引をしたら電子データのままでの保存」が本格的に始まりました。しかし、実際には人手が足りない、高齢の従業員が多いなどの理由で、未だに電子データの保存への対応準備が間に合っていない会社がたくさんありす。
そこで、電子取引のルールに含まれる「検索機能」をつけなくても良いとする緩和措置が設けられています。
検索機能不要の緩和措置の1つ目として、2年前の事業年度の売上が5,000円万円以下なら検索機能を作る必要はなく電子データの保存だけでよいとされています。税務調査のときに、電子取引をしたデータをダウンロードし、コピーを速やかに提出できれば検索機能は不要です。
検索機能不要の緩和措置の2つ目として、税務調査の際に、電子取引をしたデータをダウンロードし、コピーを速やかに提出できれば、検索機能は不要です。電子取引データを印刷し、取引年月日や金額及び取引先どこに整然と提示・提出することができるようにしている。紙で検索機能の代わりを作っておけばよいとされています。
これらの猶予措置はいつまで続くかはわかりませんが、対応の準備期間が設けられています。
④クラウドを活用した電子帳簿保存法への対応方法
電子帳簿保存法の話を聞く中で必ずと言っていいほど、「クラウド」という言葉を耳にします。
クラウドとは使う人がネットワークを通じてサーバーの提供サービスを、必要なときに必要な分だけ利用する形のことを指します。つまり、自社内に形がない媒体に保存してもOKとされています。例えばグーグルドライブやワンドライブ、ドロップボックスなどが当てはまります。
クラスドをか活用するメリットとして、今まで紙での保存がメインだったものをクラウドにあげることにより、置き場を埋めていた国税関係書類や帳簿をすっきりと記録・保存しておくことがでます。それにより、今まではあちらこちらを探していた時間を省き、業務を効率化することができます。
クラウドでは、訂正や削除の履歴を確認することができますので、保存されたデータが改ざんされないようにする「真実性の確保」に活かされます。
電子帳簿保存法の中の1つに任意対応ではありますが、「スキャナ保存」があります。「スキャナ保存」に対応した、クラウドの活用を具体的に説明します。
スキャナ保存された書類の訂正や削除を行った場合に修正履歴を確認できるシステムの利用、もしくは訂正や削除ができないシステムを利用するものです。
ワンドライブ、ドロップボックスなど一般的なクラウドストレージでも、保存すると自動的に(変更履歴)が残るものであれば、訂正・削除に関する事務処理規定を備え付けることで利用可能です。
⑤まとめ
ここまで、「電子帳簿保存法」のお話をしてきました。デジタル化が進む便利な世の中で今後も電子帳簿保存法は時代の流れに合わせて、改正がある法律であると考えられます。今後、増えるかもしれないこととして過去のデータを電子での保存などが考えられます。
こういったこと経理の担当者を付けずに、対応していくことは、本業に差し支えるほどの業務量になることが予測されます。まだ、紙での保存がメインになっており、ネットのクラウドの使い方や、クラウド?電子で保存?と疑問が増えてくること、もっと紙を減らしてデジタル化を推進していきたい等がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。